|
汎用プラスチックは、価格が比較的安く、加工もしやすい熱可塑性プラスチックで、工業用品から日用品、雑貨にいたるまで広く使用されています。家庭用品や電気製品の外箱(ハウジング)、サッシなどの建築資材、フィルムやクッションなどの梱包資材といった、日ごろ私たちが目にするプラスチックのほとんどが汎用プラスチックです。中でもポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS)が四大汎用樹脂と呼ばれています。 |
PE |
ポリエチレン(PE)は、軽く、軟らかく、耐水・耐薬品性が良く、成形も容易なので大量に使用されていますが、塗装・接着は困難です。大きく分類すると低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)があり、この中間の性質を持つ中密度ポリエチレンもあります。
LDPEは、密度が0.92程度、軟化点100℃、引張り強度14MPa、伸び500%で軽く、軟らかく、低い温度でも硬くなりません。また電気的な性質もよく、薬品に侵されず、溶剤にも溶けません。薄いフィルムにするとほとんど透明で厚いものは白く濁ります。
用途はエアーキャップなど包装用フィルム、農業用フィルム、水道用等のパイプ、瓶などがあります。水をまったく吸わないので、防水性にしたものがラミネートとして紙パックなどに使用されています。
HDPEは、密度が0.95程度、軟化点130℃、引張り強度40MPa、伸び20%で、LDPEと比較すると硬いですが、他の熱可塑性樹脂と比べると柔らかな部類に入ります。軽く、低い温度でも硬くなりません。また薬品に侵されず、溶剤にも溶けません。
用途は包装用フィルム(腰があり白く濁っているのでLDPEとは異なった感触)、ガス管、水道用パイプ、灯油缶、自動車のガソリンタンクなどがあります。 |
PP
|
ポリプロピレン(PP)は、美しい表面光沢と透明感を持つ樹脂です。密度が0.90程度(汎用プラスチック中最も軽い)、引っ張り強さ、耐熱性、耐薬品性に優れ、溶剤にも溶けません。しかし、低温では脆くなる欠点があります。また、接着や印刷も困難です。
用途は幅広く、コンテナや容器類、自動車部品、電子レンジ用容器、給食器、フィルム、繊維、結束材などがあります。ちなみにオーストラリアの紙幣もPPで出来ています。 |
PS
|
ポリスチレン(PS)は透明で成形性に優れた樹脂で、一般用ポリスチレンをGPPSといいます。特徴は高周波域での絶縁性、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性はよいですが、耐有機溶剤性、耐衝撃性はよくありません。
代表的な用途としては透明食品容器、電気部品のケース(CDケースなど)、電気製品の一部(冷蔵庫のトレーなど)があります。
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)はGPPSの耐衝撃性を改良したものです。HIPSはブタジエンゴムなどを配合して、剛性を下げるかわりに耐衝撃性を向上しています。透明性はなくなり乳白色になります。代表的な用途は、家電・OA機器の外枠、洗面化粧台、玩具・文具類があります。
また、発泡ポリスチレンビーズ(PSのペレットにプロパンやブタン等の液体を吸収させたもの)を水蒸気で暖めると、プロパンやブタンがガスになって発泡してポリスチレンフォーム(発泡スチロール)になります。パッキング材や魚箱、断熱材に使用されています。 |
PVC
|
ポリ塩化ビニル(PVC)は、可塑剤を加えないで作った硬質ポリ塩化ビニルと可塑剤(ジオクチルフタレートなど)を加えて作った軟質ポリ塩化ビニルに別れます。耐薬品性・耐油性にすぐれ、電気絶縁性が大きく、透明・着色が自由です。ただし、リサイクルは困難で、焼却破棄ができません。
硬質ポリ塩化ビニルは、名前の示すとおり硬くて密度は1.30〜1.58程度です。用途はパイプ(水道用など)、板、波板、雨樋、住宅用サッシなどがあります。
軟質ポリ塩化ビニルは、可塑剤を30〜50%加えて柔軟にしたものです。主な用途はフィルム(農業用・建材工業用など)、レザー、シート、ホース、電線被覆など広範囲に使用されています。 |
PMMA
|
ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、メタクリル樹脂(または、略してアクリル)とも呼ばれます。
特徴は耐候性がよく硬度は高いですが、衝撃に対する強さはあまりよくありません。酸・アルカリ・無機塩類に耐性がありますが、有機溶剤には侵されます。透明度がプラスチックの中では最高でガラスに匹敵します。光線の透過率は厚み3mmで約93%あり、日光に当たっても変色しません。
用途は、ガラスのかわりに使われることが多く、光ファイバー、レンズ(眼鏡・コンパクトカメラなど)、光ディスク、自動車のテールライトやメーターカバーなどがありますが、それ以外には、シリカなど適当な充填剤を用いた人工大理石もあります。
|
ABS
|
アクロリニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)は、バランスの取れた性質をもっており、Aが耐熱性・耐薬品性、Bが耐衝撃性、Sが流動性・光沢・硬度と特徴をもち寄っています。これらの成分の比率を変えることで、目的にあった性質にすることが出来ます。一般品種のABSは乳白色で、100℃には耐えられず、野外で長時間使用すると脆くなります。
その他に、PMMAを混ぜて透明にした透明ABS樹脂、100℃以上の使用に耐える耐熱ABS樹脂、日光に暴露すると脆くなる欠点をなおしたAAS樹脂(Bのかわりにアクリルゴムを使用)・AES樹脂(BのかわりにEPDMゴムを使用)などがあります。
用途は幅広く、冷蔵庫や洗濯機などの家電、テレビやレコーダーなどの電子機器、自動車などの内外装部品、OA機器やミシンなどの一般機器、雑貨、さらには多種高分子への添加物としても使用されます。
|