熱硬化性樹脂(thermosetting resin)は、加熱を続けるうちに固体になります。熱可塑性樹脂と異なり、再度加熱しても再び柔らかくなりません。このため、再加工は出来ません。その反面、高温でも使用できる特徴があります。加工法や温度性能が異なり、熱可塑性樹脂が使えない独自の用途で用いられています。
熱硬化性樹脂には、基剤と硬化剤を混ぜて硬化反応を起こさせるタイプもあります。
熱硬化性樹脂の成形は、成形中に硬化反応をさせる必要があります。つまり、反応を完結させるのに時間がかかり、各部の反応が均一になるためには温度を厳しく制御する必要があります。

フェノール樹脂(PF)は、使用原料、その配合比、触媒の種類などによって性質が変化します。また、充填材、強化材(木粉、セルロース、無機粉末、ガラス繊維など)の種類によっても性質が変化します。
一般的には力学的性質、耐熱性、耐寒性、耐水性、電気絶縁性、寸法安定性、耐有機溶剤性が優れていますが、耐アルカリ性、耐アーク性はよくなく、耐衝撃性も低いです。高温度に長時間さらされると赤褐色に変色するので着色剤使用に制限があります。
用途は、車両分野ではエンジン周辺や電装部品に使用され、ディスクパッド、クラッチフェーシングなどの結合材としても使用されています。また、電機分野ではスイッチ、ブレーカーなどの部品、電源トランスのボビンなどに使用されています。また、砥石の結合剤としても使用されています。

　UF

ユリア樹脂(UF)はアミノ樹脂(アミノ基を有する化合物にホルマリンを重縮合させて作った熱硬化性樹脂)に属します。
耐衝撃性は低いですが、表面硬度が高い、無色で着色性に富んでおり、耐アーク性、耐有機溶剤性、耐薬品性に優れています。一方で、酸・アルカリには弱く、耐熱性がよくありません。
用途は9割程度が木材用接着剤として使用されており、成形材料としては、配線器具部品・照明器具部品・漆器用などに使用されています。

　MF

メラミン樹脂(MF)はUF同様アミノ樹脂に属します。
耐衝撃性は低いですが、表面硬度が高い、無色で着色に富んでいる、耐アーク性、耐熱性、耐熱水性がよい、といった特徴があります。耐薬品性も優れていますが、強酸・強アルカリには侵されます。
用途は接着剤、塗料用が多く、化粧板用や成形用にも使用されています。成形用としては食器、厨房器具、電気部品などがあります。

　UP

不飽和ポリエステル樹脂(UP)の多くがFRP用です。FRP(Fiber Reinforced Plastics)とは、繊維を用いてプラスチックを強化したものをいいます。
FRPは液状のまま成形加工に使用するものと、成形材料としてあらかじめ強化材、充填材、離型材などを混合したBMC、ガラス繊維マットに樹脂を含浸させたシート状のSMCがあります。
UPは、含浸性が優れ強化効率が高く、着色が自由で、耐有機溶剤性、耐酸性、耐候性に優れますが、UPの中にポリスチレン (PS)の重合体を含むため、PSを溶解する溶剤、アルカリには弱く、耐熱水性もよくありません。それ以外には電気絶縁性、耐アーク性、耐電圧などが優れています。
用途は建築資材分野で、水タンク、浴槽、洗面化粧台、キッチンカウンタ、浄化槽、簡易トイレなどがあり、工業用機材分野で、薬品タンク、パイプ、ダクト、ヘルメットなどがあります。
また、輸送分野では漁船、ボート、ヨット、車両ボディ、エアロパーツなどがあります。
FRP以外では注型用(人工大理石、レジンコンクリート、床材など)、塗料、化粧板用に使用されます。

　EP

エポキシ樹脂(EP)は塗料・接着剤など成形加工を必要としないものに多く使用されていますが、注型品・積層品・成形品としても使用されています。
特徴は電気的性質が極めて優れ、耐熱性、耐寒性、力学的性質、耐薬品性、耐湿・耐水性が優れています。
用途は注型品では交流変圧器、開閉機器等の回路ユニットなどがあり、積層品はプリント配線基板、絶縁ボード、成形品ではIC・半導体・ダイオード・LEDなど電子部品のレジンパッケージ、コネクタなどがあります。

　PDAP

ジアリルフタレート樹脂(PDAPまたはDAP)は強化材、充填材、離型剤、着色剤などを加えて成形材料が作られ、圧縮成形、トランスファ成形、射出成形などで成形されます。
耐熱性、耐熱水性、高温・高湿下での力学的性質、電気的性質、耐薬品性、耐炎性、寸法安定性に優れています。また、着色材料を作ることができます。
用途は電気･電子分野での使用が多く、プリント回路用コネクタ、スイッチ、リレー部品、コイル・素子の封止などがあります。また、化粧板として家具類や木口貼り材料などや、砥石のバインダとしても利用されています。